各攻撃がどのように行われるか、攻撃の原理、具体的なコード例、
およびWordPressでの対策について解説します。
XSSは、ユーザーが入力したスクリプトがサーバーで正しく処理されずに、そのままWebページに出力される場合に発生します。悪意のあるユーザーは、入力フォームやURLを通じてJavaScriptコードを挿入し、被害者のブラウザで実行させることが可能です。
<input type="text" name="comment" value="<script>alert('XSS');</script>">
この場合、コメント欄に挿入されたスクリプトがそのままブラウザで実行され、アラートが表示されます。
wp_kses
関数は、許可されたHTMLタグや属性を指定して入力をエスケープします。$sanitized_comment = wp_kses($_POST['comment'], array('p' => array()));
echo $sanitized_comment;
このコードは<p>
タグだけを許可し、それ以外のタグや属性は削除します。
esc_html()
やesc_attr()
などの関数を使用して、JavaScriptコードの埋め込みを防ぎます。echo esc_html($_POST['comment']);
セッションIDが盗まれると、攻撃者が正当なユーザーのセッションを引き継ぎ、ユーザーに成りすますことができます。これは、セッションIDが暗号化されていない場合や、セッションIDがURLに含まれる場合に発生します。
// 攻撃者があらかじめ固定のセッションIDを設定
session_id('fixed_session_id');
session_start();
攻撃者は被害者に固定されたセッションIDを使用させ、そのセッションを乗っ取ります。
wp-config.php
に以下を追加してSSLを強制します。define('FORCE_SSL_ADMIN', true);
setcookie
関数にHTTPOnly
属性を付加して、クッキーがJavaScriptからアクセスされないようにすることができます。setcookie('wordpress_logged_in', $session_value, time() + 3600, '/', '', true, true);
SQLインジェクションは、ユーザーが入力したデータが直接SQLクエリに埋め込まれる際に発生します。攻撃者はSQL文を操作し、データベース内の情報を不正に取得、更新、または削除することが可能です。
// ユーザー入力がそのままSQLに埋め込まれる
$username = $_POST['username'];
$query = "SELECT * FROM users WHERE username = '$username'";
攻撃者が' OR '1'='1
のような入力を行うと、クエリは常に真となり、すべてのユーザー情報が取得されます。
$wpdb
オブジェクトを使用し、SQLインジェクションを防ぐためにプレースホルダを利用します。global $wpdb;
$username = $_POST['username'];
$query = $wpdb->prepare("SELECT * FROM users WHERE username = %s", $username);
$results = $wpdb->get_results($query);
このように$wpdb->prepare
を使うことで、ユーザー入力が適切にエスケープされます。
CSRFは、認証されたユーザーが意図しない操作を実行させられる攻撃です。ユーザーが信頼するサイトにログインしたまま、攻撃者が用意した偽のフォームを実行させることで、ユーザーに代わって不正な操作を行わせます。
<!-- 攻撃者が用意したフォーム -->
<form action="https://vulnerable-site.com/delete-account" method="POST">
<input type="hidden" name="user_id" value="1">
<input type="submit" value="Delete Account">
</form>
ユーザーがこのページを開くと、アカウント削除リクエストが送信されてしまいます。
wp_nonce_field()
を使用してCSRFトークンを生成し、フォームに追加します。<form method="post">
<?php wp_nonce_field('delete_account_action'); ?>
<input type="hidden" name="user_id" value="1">
<input type="submit" value="Delete Account">
</form>
サーバー側でcheck_admin_referer()
を使ってトークンを検証します。
if ( ! check_admin_referer('delete_account_action') ) {
wp_die('CSRF検証に失敗しました');
}
クリックジャッキングは、透明なフレームを使用して、ユーザーが意図しないリンクやボタンをクリックさせる攻撃です。たとえば、ユーザーが見えないフレーム内の危険なボタンをクリックすることで、不正な操作が行われます。
<!-- 攻撃者が透明なフレームを仕込んだページ -->
<iframe src="https://vulnerable-site.com" style="opacity: 0; position: absolute; top: 0; left: 0; width: 100%; height: 100%;"></iframe>
ユーザーは目に見える自分のサイトを操作しているように見えても、実際には攻撃者の仕掛けた透明なフレームをクリックしています。
X-Frame-Options
ヘッダーを設定します。これはプラグイン「HTTP Headers」を使用するか、functions.php
に次のコードを追加して行えます。add_action('send_headers', 'add_security_headers');
function add_security_headers() {
header('X-Frame-Options: SAMEORIGIN');
}
これにより、同一オリジンからのフレーム表示のみが許可されます。
XSSは、ユーザーの入力が適切にエスケープされない場合、悪意のあるスクリプトがブラウザで実行されることによって発生します。
<input type="text" name="comment" value="<script>alert('XSS');</script>">
このスクリプトが実行されると、アラートが表示されます。
{{ $variable }}
を使用することで、HTMLエスケープが自動的に行われます。{{ $comment }}
これにより、ユーザーの入力に含まれるスクリプトは自動的にエスケープされます。
e()
関数を使用したエスケープ: プログラム内で出力する際にもe()
関数を使用して、手動でエスケープできます。echo e($comment);
セッションIDを盗むことで、攻撃者はユーザーのセッションにアクセスし、不正な操作を行うことが可能です。これがセッションハイジャックです。
config/session.php
でセッションをsecure
モードに設定し、HTTPS経由でのみセッションIDを送信できます。'secure' => env('SESSION_SECURE_COOKIE', true),
login()
メソッドを使用する際に自動的に行われます。Auth::login($user, true); // trueはリメンバーオプション
config/session.php
で設定できます。'http_only' => true,
SQLインジェクションは、悪意のあるSQL文がユーザー入力を通じてデータベースクエリに組み込まれることで発生します。これにより、データの漏洩や削除などが引き起こされます。
// ユーザー入力をそのままSQLに挿入する脆弱なコード
$username = $_POST['username'];
$query = "SELECT * FROM users WHERE username = '$username'";
この場合、ユーザーが' OR '1'='1
を入力すると、SQLクエリが常に真となり、すべてのユーザー情報が取得されます。
$user = User::where('username', $request->input('username'))->first();
$users = DB::table('users')->where('username', $request->input('username'))->get();
CSRFは、ユーザーが意図しないリクエストを送信させられる攻撃です。攻撃者は、ユーザーがログインしていることを利用して、不正な操作を実行させます。
csrf_field()
を使用してフォームにトークンを追加します。<form method="POST" action="/submit">
@csrf
<input type="text" name="name">
<button type="submit">Submit</button>
</form>
VerifyCsrfToken
ミドルウェアがLaravelに組み込まれており、トークンが一致しないリクエストは拒否されます。クリックジャッキングは、透明なフレームを使用してユーザーのクリックを不正なリンクやボタンに誘導する攻撃です。
X-Frame-Options
ヘッダーを設定することで、クリックジャッキングを防止します。app/Http/Middleware/FrameGuard.php
を作成し、SAMEORIGIN
を設定します。namespace App\Http\Middleware;
use Closure;
class FrameGuard
{
public function handle($request, Closure $next)
{
$response = $next($request);
return $response->header('X-Frame-Options', 'SAMEORIGIN');
}
}
Kernel.php
に登録します。protected $middleware = [
// 他のミドルウェア...
\App\Http\Middleware\FrameGuard::class,
];
これらのセキュリティ対策をLaravelアプリケーションに実装することで、XSS、セッションハイジャック、SQLインジェクション、CSRF、クリックジャッキングの脅威からアプリケーションを保護できます。